Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
Initialising ...
熊谷 友多
放射線化学(インターネット), (115), p.43 - 49, 2023/04
ウラン酸化物の放射線による酸化と水への溶解反応に関する研究は、使用済核燃料の地層処分を背景として進められてきた。またその知見は、原子炉過酷事故で形成される燃料デブリの化学的な安定性を検討する基礎となっている。本稿ではウラン酸化物の放射線よる化学反応について既往研究についても取り上げ、受賞対象となった研究の背景や意義について紹介する。
熊谷 友多; 日下 良二; 中田 正美; 渡邉 雅之; 秋山 大輔*; 桐島 陽*; 佐藤 修彰*; 佐々木 隆之*
放射線化学(インターネット), (113), p.61 - 64, 2022/04
東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故では燃料や被覆管、構造材料等が高温で反応して燃料デブリが形成されたとみられている。1F炉内は注水や地下水の流入で湿潤な環境にあり、放射線による水の分解が継続していると考えられ、これが燃料デブリの化学的な性状に影響する可能性がある。1F燃料デブリの組成や形状については、いまだに十分な情報が得られていないが、炉内や周辺で採取された微粒子の分析結果では、様々な組成が観測されており、事故進展における温度履歴や物質移動の複雑さを反映していると考えられる。1Fサンプルのように複雑組成の混合物については、水の放射線分解が与える影響に関する知見が乏しい。そこで、水の放射線分解の影響として想定すべき燃料デブリの性状変化を明らかにするため、模擬デブリ試料を用いてHO水溶液への浸漬試験を行った。その結果、HOの反応により、模擬デブリ試料からウランが溶出し、過酸化ウラニルの形成が進むことが分かった。またUO相の固溶体形成によるHOに対する安定化が観測された。これらの酸化劣化の過程は、ウラン含有相の反応性や安定性に基づいて説明できることを明らかにした。
松谷 悠佑; 甲斐 健師; 小川 達彦; 平田 悠歩; 佐藤 達彦
放射線化学(インターネット), (112), p.15 - 20, 2021/11
Particle and Heavy Ion Transport code System (PHITS)は、放射線挙動を模擬する汎用モンテカルロコードであり、原子力分野のみならず工学,医学,理学などの多様な分野で広く利用されている。PHITSは2010年に公開されて以降、機能拡張や利便性向上のために改良が進められてきた。今日までに、電子線,陽電子線,陽子線,炭素線の4種類の荷電粒子を対象として、液相水中における個々の原子との反応を模擬できる飛跡構造解析モードの開発を進めてきた。本モードの開発により、DNAスケールまで分解した微視的な線量付与の計算が可能となった。加えて、飛跡構造解析モードの高精度化へ向けて、任意物質中において多様な粒子タイプに適用可能な汎用的飛跡構造解析モードの開発も進められている。本稿で解説するPHITS飛跡構造解析モードに関するこれまでの開発経緯と将来展望により、PHITSコードの原子物理学,放射線化学,量子生命科学分野への応用がより一層期待される。
宮崎 康典; 佐野 雄一
放射線化学(インターネット), (112), p.27 - 32, 2021/11
使用済燃料再処理で発生する高レベル放射性廃液からマイナーアクチニド(MA: Am, Cm)を分離回収する抽出クロマトグラフィの技術開発を行っている。圧力損失を低減する大粒径吸着担体に対し、MAと希土類元素を相互分離する-ヘキサオクチルニトリロトリアセトアミド(HONTA)を含浸した吸着材の安全性を評価した。線照射後の熱的特性や吸着性能の変化、並びに水素ガスの発生量から、MAをランタニド(Ln)から分離可能な線量を1MGyに設定するとともに、分離操作において、現在の想定設備以外で冷却ユニットやオフガスユニット等の予防措置は必要ないことを示した。
岡 壽崇; 高橋 温*
放射線化学(インターネット), (110), p.13 - 19, 2020/10
東京電力福島第一原子力発電所によって野生動物が受けた外部被ばくを、電子スピン共鳴(ESR)法を用いてどのように計測するかを解説した。ニホンザルのエナメル質を用いて、炭酸ラジカル強度と吸収線量の関係、いわゆる検量線を作成した。検量線から推定された検出限界は33.5mGyであり、ヒト臼歯を用いた際の検出限界とほぼ同等であった。この検量線を用いて福島県で捕獲された野生ニホンザルの外部被ばく線量を推定したところ、45mGyから300mGyの被ばくをしているサルが見つかった。確立した方法により、ニホンザルだけでなく、アライグマやアカネズミなどの野生動物の外部被ばく線量推定が可能になった。
田中 桐葉*; 武藤 潤*; 長濱 裕幸*; 岡 壽崇
放射線化学(インターネット), (110), p.21 - 30, 2020/10
電子スピン共鳴(ESR)法を用いた断層年代推定法は、断層内物質に含まれる鉱物中の欠陥に捕獲された不対電子数をESR信号強度として検出し、地震前後でのESR信号強度の量的変化に基づいて断層活動年代を推定する手法である。しかし、この手法には、地震時の断層運動によりESR信号強度が0になるゼロセットと呼ばれる現象が前提としてある。これまでに、ESR信号強度のゼロセットを理解・実証するために、天然の断層破砕物の解析や断層運動を模擬した室内実験等が行われている。本稿では、断層運動によるESR信号のゼロセットに関する過去の研究をまとめ、現状と今後の課題について述べる。
小川 達彦; 佐藤 達彦; 八巻 徹也*
放射線化学(インターネット), (108), p.11 - 17, 2019/11
電子線, 線,陽子,重イオンなどの多様な種類の放射線を検知するシンチレータは、付与されたエネルギー量に応じた光を発する。ここで、エネルギー付与密度の高い重イオンのような粒子に対してはクエンチング現象が起こり、エネルギー付与量と比して発光が少なくなることが知られている。さらに、励起した蛍光分子が他の蛍光分子にエネルギーを受け渡すメカニズム(Frster効果やDexter効果)によって、クエンチング現象を説明できることが有機シンチレータに関する過去の研究で示されている。そこで、本研究では、CsI(Tl), NaI(Tl), BGOの3種類のシンチレータにおいて、様々なエネルギー・線種の放射線の照射を受けた際のエネルギー付与を飛跡構造計算コードRITRACKSにより計算し、発光準位に励起する励起子の空間配置や量を予測した。また、各励起子が相互作用によりエネルギーを受け渡す確率を計算し、発光に寄与しない励起子を除いた数を計算した。その結果、相互作用の伝播距離を適切に選択することにより、MeV-GeV範囲の光子・陽子・重イオンによる発光の実験値を正確に再現することができた。特に光子による発光におけるエネルギーに対する非線形性や、低速で原子番号の大きい重イオンの入射の場合に、発光がとりわけ抑制されることなど、重要な特性を再現できたことで、本手法の有効性が示された。
熊谷 友多
放射線化学(インターネット), (107), p.77 - 78, 2019/04
過酷事故および直接地層処分における核燃料の化学変化を理解する基礎として、二酸化ウランの水溶液中での酸化的溶解反応を調べた。この反応は、使用済核燃料から発される放射線が周囲の水を分解し、過酸化水素などの酸化剤を発生されることから始まる。この酸化剤が二酸化ウランの表面を水溶性の高い6価の状態とすることで、核燃料の母材である二酸化ウランが溶解する。本研究では、この酸化と溶解の反応過程において、過酸化水素の反応が二酸化ウランの表面に反応中間体を形成する可能性を調べた。そのために、反応過程における過酸化水素濃度の減少とウラン濃度の増加を時間分解で測定した。その結果、過酸化水素を高濃度にすることで、二酸化ウラン表面での過酸化水素の分解が活性化されること、一方で反応速度が低下することが分かった。これらの結果は、二酸化ウランの表面の反応性の変化を示しており、反応中間体が表面に蓄積されることを示唆する。
甲斐 健師; 横谷 明徳*; 藤井 健太郎*; 渡邊 立子*
放射線化学(インターネット), (106), p.21 - 29, 2018/11
放射線によりDNAの数nm以内に複数の損傷部位が生成されると、細胞死や染色体異常のような生物影響が誘発されると考えられている。本稿では、電子線トラックエンドにおいて生成されるDNA損傷が関与する生物影響の誘発について、われわれが進めたシミュレーション研究の成果を解説する。その結果から、1次電子線照射によりDNA鎖切断を含む複数の塩基損傷が1nm以内に密に生成され、その複雑損傷部位から数nm離れた位置に2次電子により塩基損傷が誘発されることが示された。この孤立塩基損傷部位は損傷除去修復が可能であり、結果として鎖切断に変換されるため、1次電子線により生成された鎖切断と合わせ、最終的にDNAの2本鎖切断が生成され得る。この2本鎖切断末端は塩基損傷を含むために修復効率が低下し、未修復・誤修復により染色体異常のような生物影響が誘発されることが推測された。本シミュレーション研究の成果はDNA損傷の推定のみならず放射線物理化学過程が関与する現象の解明にも有益となる。
喜多村 茜; 小林 知洋*
放射線化学(インターネット), (104), p.29 - 34, 2017/10
フッ素系高分子材料は、耐化学薬品性が高いがゆえ、従来の微細加工技術が適用できない。そこで、放射線には容易に分解される特性を利用した微細加工技術の研究が進められている。我々は放射線の中でもイオンビームに着目し、イオンビームがもたらす多様な照射効果を利用した新しい微細加工技術の開発に取り組んできた。イオン注入法では、PTFE表面に金型を利用することなく、照射だけで芝生のような微小突起が密集した構造面を作製できる。プロトンビーム描画法では、入射イオンがPTFE内部に侵入する過程で発生した分解ガスを利用し、PTFE表面に内部から隆起した頂点を持つ構造体を作製することができる。またプロトンビーム描画法の後にイオン注入法を行うことによって、芝生状突起構造面に平滑な線の描画形状が形成された構造を作製できる。今回は、イオン注入法、プロトンビーム描画法、及び両手法を組み合わせた計3種類の技術を使って得られる微細加工法について述べた。
端 邦樹; Lin, M.*; 横谷 明徳*; 藤井 健太郎*; 山下 真一*; 室屋 裕佐*; 勝村 庸介*
放射線化学(インターネット), (103), p.29 - 34, 2017/04
エダラボン(3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン)は高い抗酸化作用を示す物質である。本研究では、OHやN等の酸化性ラジカルとエダラボンとの反応をパルスラジオリシス法によって測定し、発生するエダラボンラジカルの生成挙動を観察した。その結果、OH以外の酸化性ラジカルとの反応は電子移動反応であるが、OHとは付加体を形成することが分かった。また、DNAのモノマーであるdeoxyguanosine monophosphate(dGMP)の一電子酸化型のラジカルとの反応についても調べたところ、電子移動反応によって非常に効率よくdGMPラジカルを還元することが示された。エダラボンを添加したプラスミドDNA水溶液への線照射実験によって、実際のDNA上に発生したラジカルの除去効果を調べたところ、塩基損傷の前駆体に対してエダラボンが作用することが示された。これらの結果は、生体内においてエダラボンが酸化性ラジカルの捕捉作用だけでなく、ラジカルによって酸化されたDNAを化学的に修復する作用も示すことを示唆するものである。
端 邦樹
放射線化学(インターネット), (103), P. 65, 2017/04
OECD/NEAの下で実施されている国際協力プロジェクトであるHalden Reactor Project(HRP)へ出向となり、平成27年5月からの約1年半の間ノルウェー南部の町ハルデンに滞在した。出向中は炉内構造材料の照射誘起応力腐食割れに関する試験に従事した。現地での業務の内容や私生活に関して報告する。
甲斐 健師; 横谷 明徳; 藤井 健太郎; 渡辺 立子
放射線化学(インターネット), (101), p.3 - 11, 2016/04
水中における低エネルギー電子の挙動解析は、放射線化学に関する基礎研究や放射線によるDNA損傷の推定の解析等で重要となる。われわれは、これまで低エネルギー2次電子の果たすDNA損傷の役割を解明するため、不確定要素を未だ多く含む放射線物理化学過程の研究を進めてきた。また、これらの研究成果に基づき、DNA内部から電離した2次電子が関与する修復され難いDNA損傷生成過程を新たに理論予測した。本稿は、著者らのこれまでの研究成果について、放射線化学の専門誌で、前・中・後編の3部構成で「放射線物理化学過程に関する最近の進展」と題して解説するものである。前編では、3部にわたって報告する放射線によるDNA損傷研究、放射線物理化学過程研究の現状について、冒頭で概説する。また、トピックスとして、これまでの成果の中から、電子の減速過程を研究する上で必要不可欠となる液相の衝突断面積の計算法に関する研究を紹介し、水中における電子の熱化について、従来予測と異なる点について議論した結果を解説する。
甲斐 健師; 横谷 明徳*; 藤井 健太郎*; 渡邊 立子*
放射線化学(インターネット), (102), p.49 - 56, 2016/00
水中における低エネルギー電子の挙動解析は、放射線化学に関する基礎研究や放射線によるDNA損傷の推定の解析等で重要となる。われわれは、これまで低エネルギー2次電子の果たすDNA損傷の役割を解明するため、不確定要素を未だ多く含む放射線物理化学過程の研究を進めてきた。また、これらの研究成果に基づき、DNA内部から電離した2次電子が関与する修復され難いDNA損傷生成過程を新たに理論予測した。本稿は、われわれのこれまでの研究成果について、放射線化学の専門誌で、前・中・後編の3部構成で「放射線物理化学過程に関する最近の進展」と題して解説するものである。中編では、本研究において開発した動力学モンテカルロコードを検証するために、電子の熱化距離や熱化時間に関する計算結果を紹介し、熱化と水和前過程について、これまでの従来予測と異なる点について議論した成果を解説する。
倉島 俊
放射線化学(インターネット), (100), p.49 - 51, 2015/10
サイクロトロンのビームは、イオンの加速に数十MHzの高周波電圧を用いるため、ビームパルスの時間構造は繰り返し周期が数十ナノ秒程度の連続パルスである。一方、放射線化学におけるパルスラジオリシスの実験では、マイクロからミリ秒の繰り返し周期の長いイオンビーム(シングルパルスビーム)が求められる。このため、原子力機構TIARAのサイクロトロンではビームチョッパーを用いたパルスビーム形成技術を開発した。ここで採用した方式は、サイクロトロンの上流側と下流側に設置した2台のビームチョッパーを併用してビームパルス数を大幅に間引きシングルパルスビームを形成するもので、サイクロトロンのマルチターン取り出しの回数を従来よりも削減し、その状態を維持することが必要であった。そこで、加速位相の高精度制御やサイクロトロン磁場の高安定化などの技術開発を行い、マルチターン取り出しの回数をシングルパルスビーム形成に必要な5回程度に抑え、長時間安定に維持することを可能にした。その結果、プロトン65MeV,炭素320MeVなど様々なイオンビームのシングルパルスビームをユーザへ定常的に提供することが可能となった。
玉田 正男
放射線化学(インターネット), (100), P. 16, 2015/10
放射線を駆使した研究開発とそのマネジメントに携わって、35年、捕集材による温泉水中のレアメタルの捕集は特にマスコミの注目を受け、数多くの新聞やNHKの「おはよう日本」などのテレビ報道で大きな反響を呼んだ。捕集実験は群馬県にある自然湧出量が日本一である草津温泉で行った。朝8時からの生放送では、6時から現地にスタンバイしたこともあった。また、モノマーを界面活性剤により水に安定に分散して行うエマルショングラフト重合の発案は、捕集材を作製するコストをいかに抑えるかという問題の解決に繋がり、半導体洗浄液中のppbレベルの金属除去フィルターやセシウム吸着材の技術移転の道を切り開くことができた。
長谷 純宏
放射線化学(インターネット), (100), p.86 - 88, 2015/10
日本原子力研究開発機構では、1991年に世界初の材料・バイオ研究専用施設として現在の高崎量子応用研究所に設置されたイオンビーム照射施設(TIARA)を利用して、イオンビームの生物影響ならびに突然変異を利用した植物や微生物の新品種開発に関する研究を行ってきた。本稿では、TIARAでの事例を中心として、イオンビームによって生じる突然変異の特徴、植物及び微生物の実用品種育成などに関する研究成果、ならびに現在行われている研究や将来展望について解説する。
熊谷 友多
放射線化学(インターネット), (99), p.53 - 56, 2015/04
分離核変換サイクルにおける発熱性核種の線源利用への展開を目指して、線を用いた水処理法の吸着剤併用による高度化を目的として、水溶性有機物の放射線分解に対するゼオライトの添加効果を調べた。模擬物質として2-クロロフェノール(2-ClPh)の水溶液を用いて、線照射による分解反応に対する各種ゼオライトの添加効果、溶液pHの影響、2-ClPh濃度の影響を調べた。その結果、モルデナイト型ゼオライト(NaMOR)の添加により2-ClPhがNaMORに吸着し、照射により吸着した2-ClPhが分解することを明らかにした。さらに、2-ClPhが分子状で溶存するpH条件が吸着に適しており分解効率が向上すること、2-ClPh濃度の増加とともに吸着量が増加し、分解が促進されることを明らかにした。
西内 満美子
放射線化学(インターネット), (97), p.13 - 27, 2014/00
超高強度レーザーと薄膜ターゲットの相互作用によって初めて陽子が発生したのが確認されてから、15年が経過した。初期の段階ではキロジュールクラスのエネルギーのレーザーパルスを用いて、50MeVの陽子線が発生していたが、現状に至っては、小型の繰り返しの効くレーザーによって、同党の陽子線が発生できるようになってきて、様々な応用への展開が見え始めてきた。本稿においては、レーザー駆動イオン線に関する特徴や、最近の研究結果などについてレビューする。
玉田 正男
放射線化学(インターネット), (96), P. 1, 2013/09
日本の経済再生に科学技術イノベーションが期待される時代が到来している。量子ビームによるモノづくりの特長は、新しい特性を有する材料、または、これまでの化学的な手法で達成された機能や性能をはるかに凌駕する材料が開発できることにある。これらの材料は、技術移転を推し進めるうえで従来製品との比較において非常に有利であり、量子ビームによるモノづくりの大きなメリットとなっている。そのためにも、新規の量子ビームにかかわる技術開発と新しいシーズに関する研究開発は、産業応用を目指すうえで極めて重要である。